【第9期 第5回講義】
「雲が教えてくれること ~楽しみながら学ぶ気象と防災~」
合同会社てんコロ.
代表・気象予報士 佐々木 恭子 先生
お待たせいたしました!
2023年2月4日に実施した「第5回講義」にご登壇いただいた、合同会社てんコロ.代表で、気象予報士 佐々木 恭子 先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
学生の子どもたちから、感想を含めいろいろな質問がある中、余りにも数が多いため、皆さんからの質問が多く、先生だからこそお答えいただける専門的な質問にまとめてお願いをしています。
佐々木先生の追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!
【合同会社てんコロ.代表・気象予報士 佐々木 恭子 先生がみんなの質問に答えます!】
★質問1. 火山活動の関係で湖が酸性から中性になってきているのではないか、という新聞記事を読みました。酸性雨などの影響によって雲は変化するのでしょうか。
酸性雨の影響で雲が変化するというより、雨の元となる雲自体が酸性雨に関係しています。雲ができる際に、雲の芯となるエアロゾルとして酸性の物質があり、それが雲の粒に溶け込んで酸性の雲ができます。さらに、雲の粒が大きくなって雨が降って来るときに、落下の経路上に浮遊している酸性物質を取り込んで酸性になる場合があります。これらが組み合わさって酸性雨ができます。
★質問2. 雲は、水や氷の粒でできていると聞きました。水や氷は空気より重いのに、空に浮かんでいられるのはなぜでしょうか。
雲を構成している水や氷の粒はとても小さく、その大きさは髪の毛の5分の1程度しかありません。水や氷の粒ですから、もちろん重力で落下します。しかし、大気中にはあちこちに上昇気流(上へ向かう流れ)があり、小さい雲の粒たちは、その上昇気流に逆らって落ちてくることはできません。そのため、空に浮かんでいられるのです。
★質問3. 近年、全く雨の降らない地域に大量の雨が降ったりするなどの気候変動が起きていると聞きます。その中で全く新しい雲が発見されるなんてことは考えられるのでしょうか。それともどんな状況下で起こった雲も今ある十種雲形に分類されるのでしょうか。
地球の大気中で発生する雲は、すべて気象学や雲科学で説明できます。基本的には十種雲形に分類はできますが(特別な雲をのぞいて)、姿かたちの他にも、発生の仕方や成長の過程によって、100種類以上に分類できる分け方もあります。どうして大雨になったのかなど、雲の内部で起こっていることの詳細が重要なこともありますが、基本的な雲形は分類できます。
★質問4. 一つの雲が発生してから消えるまで約何分かかるのでしょうか。
面白いですね!雲は発生と消滅を繰り返しているので、寿命を区切るのはなかなか難しいですが、例えば、空をどんより曇らせる「層積雲(そうせきうん・別名:くもり雲)」、地面に達すると霧に分類される「層雲(そううん・別名:霧雲)」は、6~12時間の寿命といわれています。これらの雲は、とてもおとなしい雲です。一方、「積雲(せきうん・別名:わた雲)」や「積乱雲(せきらんうん・別名:雷雲)」など、上空に向かってモクモクと元気に発達する雲は、10分程度のものから、長くても1時間程度です。元気な雲のほうが、寿命が短いのですね。
★質問5. 積乱雲のなかで、どのように雷ができるのですか。
まだすべての仕組みが解明されているわけではありませんが、積乱雲の中でできた氷の粒が、ほかの氷の粒や水の粒とぶつかり合ううちに、雲の中で電荷が偏る(プラスのゾーンとマイナスのゾーンが分かれて帯電してしまう)ようになります。その偏りを解消すべく、プラス・マイナスの電荷が中和していく方向に動いて、雷が発生しています。
★質問6. AIで気象予報はできますか。それにより気象予報士の仕事はなくなってしまいますか。
AIでできる部分は多いと思いますが、現代の天気予報の基礎である数値予報モデルでは、完全予報はできません。また、天気予報を提供される側も、数値で示されるだけでなく、詳細なコンサルティングを必要としている企業などもあります。そこには、技術のほかにも、人間同士の対話が必要ですので、仕事がなくなるということは今のところ無さそうです。
★質問7. (統計上)関東で天気が崩れにくい曜日、月などはあったりしますか。
関東は太平洋側なので、冬季は晴れる日が圧倒的に多いです。冬型の気圧配置になると、日本海側に雪を降らせて、太平洋側には乾燥した空気が吹き込むためです。また、関東全体の話ではありませんが、都市部では人間活動の影響で、平日に日中の気温が高くなり、雲の芯となるエアロゾル(大気中の浮遊物)も多くなります。その結果、水曜日あたりが積乱雲が発達しやすいという研究結果があります。ただ、これはまだ議論中です。
★質問8. 天気予報をする時にどのくらいの種類、数の機械を使いますか。また、どのような機械を使用しているのでしょうか。
天気予報は、熱力学や力学の物理法則をプログラムとして盛り込み、将来の大気の状態をシミュレーションする「数値予報モデル」を使用し、スーパーコンピューターで計算しています。スーパーコンピューターで計算された結果を使って、私たちは天気変化のシナリオ組み立てて、予報を提供しています。そういう意味では、予報はコンピューターだけでやっているようですが、予報をするために必要な、現在の大気の状態は、様々な観測測器を使用してデータを収集しています。地上気象観測(気温や湿度を地上で測る)、気象衛星、気象レーダーなどを駆使して、大気の状態をスキャンしています。
★質問9. 先生が思う特に珍しい雲はなんでしょうか。
私も出会ったことのない雲はたくさんあります。自分の目で見てみたい!と思う雲は、「夜光雲(やこううん)」という雲です。この雲は、対流圏にできる普通の雲ではなく、高度75~85kmの中間圏の上部にできるもので、地球上で最も高い空にできる雲なんです。かなり高緯度の地域に行かなければなかなか見られない雲ですが、北海道でも観測されたことがあるというので、いつかは見てみたいなと思っています。
★質問10. 先生が雲を見るとき、どのようなことを考えながら雲を見ていらっしゃいますか。
「キレイだなー」「カッコイイなあ」と思ってることがほとんどです(笑)。ただ、天気予報の業務をした日などは、上空の雲の様子から、やっぱり風が強そうだなとか、大気の状態が不安定な日だったら「積雲が発達してきたな」など、その日の大気の状態を考えながら、実際の空を照らし合わせるような感じで空を見ています。
以上、佐々木先生の追加講義はいかがでしたか?
佐々木先生!お忙しい中お答えいただきましてありがとうございました!!!