3月5日(土)に、第8期を締めくくる、最後の講義を実施!
第6回講義は、ソニー株式会社 R&Dセンターより、齋藤真里先生をお迎えして、「AIが苦手なこと、人が苦手なこと〜AIとヒトが助け合う未来〜」のテーマで講義をしていただきました。

講義の前には、いつものようにHRから開始です!
大津くんによる「ニュースを見てますか?」からスタートですが、今までの講義の振り返りを、映像を使いながら確認しました!そして、最後に藤井聡太さんのニュースから、第6回講義のテーマである「AI」の話に移り、最後のHRが終わりました。引き続き、ニュースを見ることを習慣化しつつ、内容を読み解く力を育んでほしいですね。

さて、いよいよ本講義がスタート!
講義の初めに齋藤先生は、ソニーのさまざまな製品を紹介した後に、それらのソニーの製品を作るプロセスと研究開発について教えてくださいました。ソニーの研究室には試作・設計・プログラム(コード)の分野があり、それぞれの場所でそれぞれのエキスパートが働いているとのこと。齋藤先生は、研究所を「少し先の未来を先取り」する場所だとおっしゃっていました。さまざまな企画、アイデアを生み出すためには、少し先の未来を先取りする必要があります。ソニーのみならず、そんな研究所で働く多くの人は工学部の出身で、齋藤先生のように心理学を学んでから研究所でお仕事をされる方は珍しいそうです。

そして、そんな協力や助け合いは、人間の間のみならずAIと人間の間にも存在するとのこと。AIなのに?と思うと思いますが、齋藤先生はこれまでの話を前置きとして、「AIと助け合わないと、この先やっていけないことはないかな?」と疑問を提示しました。今では我々の生活のさまざまな所に存在しているAIですが、AIを作る方法は変化しています。従来ではプログラミングを、人間がアルゴリズムを組み行っていました。しかし今では、人間の脳の仕組みを真似て作られたディープラーニングと呼ばれる機械学習をAI自身が行うことで、自動でAIを作ることが可能になったとのこと。

これは、どのような変化をもたらしたのでしょうか?それは、「特徴量を見つける」ことができるようになったということです。「特徴量」とはその物自体が持つアイデンティティのことで、人間は視覚など感覚を通して簡単に見つけることができますが、機械に自発的に見つけさせることは難しいそうです。それでは、どのようにしてAIにさせたのでしょうか。

例えば、AIに猫を学習させたいとします。そうすると研究者はひたすら猫の画像をAIに何万枚も学習させ、同時に猫でない画像も学習させます。この膨大な情報量の反復により、猫か否かという判断をAIに行わせます。このディープラーニングはとても画期的で、2000年代の研究のさまざまな場所で活躍することになりました。

ここで先生のお話はタイトルにも通じる、機械学習の得意なことについてに移りました。
AIが得意なこととしてあげられるのは、一つ目は、将棋やチェス、クイズのような何をすればよいのかはっきりしている領域。これらはAIに最適解を学習させることで、人間を凌駕する知能になるそうです。二つ目は、犬か猫か、不良品か正常品かなど基準が明確なことの判別。人は好き嫌いや偏見などから完璧に公平なジャッジを下すことはできませんが、それがないAIは指定された条件の範囲で、完璧な判断を下すことができます。三つ目は、これまでの傾向からの未来予測。人間の脳が記憶できないほど膨大な量のデータや結果から、未来に起こる事象を予測することができます。そして、これらに現在使われているAIは、個別の分野・領域に特化した特化型AIといい、対して状況によってさまざまな課題や役割を処理できる汎用型AIは、まだ研究の途中でしばらく実用化はできないそうです。

一方、人間はどうでしょうか?
先生曰く、人間は汎用型であるといいます。さらに人間には経験知もあるため、いろいろなことができたり、人間を人間たらしめる、生きていくのに都合の良い仕組みを持つことができます。その例として先生は、錯視や聴覚的補完、カクテルパーティー効果やマガーク効果について紹介してくださいました。聴覚的補完とは、言語や音楽がノイズにより一部かき消された場合にも、無意識に失われた情報を補完し内容を理解することができるという人間の能力です。それを体感するために、先生が一つの曲の音声をぶつ切りにしたもの、またノイズを入れ聞きにくくしたものの二つの音声を流しました。機械には両方とも同じバラバラな音声に聞こえますが、人間は頭の中で勝手に組み合わせができます。実際に、学生たちも聴覚的補完を感じ取ったようで、YouTubeのコメント欄には驚きの声が溢れていました。

私たちはこのような、さまざまな人間特有の仕組みを持っていますが、これらを機械でやろうとすると、とてつもなく大変なプログラムを組む必要があります。これら一連の構造を生得的に獲得できている私たちは、AIに対してアドバンテージを取ることができるのという事を学びました。

AIの話の最後に、齋藤先生から、これからの未来を生きる学生たちに大切なメッセージが送られました。そのメッセージは、未来を作るのは私たちであるということです。もちろん技術発展も大事ですが、未来は自分たち自身で創造していくことが大事であるとのこと。そして未来を創造するためには、まず未来を分析する必要があります。これから変わることとこれまでと変わらないことは何かを考え、解決しなくてはいけない課題を見つけなくてはいけません。そこで、齋藤先生は未来分析のための9セル法という方法を紹介してくださいました。これは、9つの視点から未来を想像し、その未来に対して自分だったらどうするかを考えるものです。先生は、これから技術が発達したり社会が変化したとしても変わらないものがあるので、自分でこれは変わる、変わらないということを判断したり、考えたりすることが、これからを生きる私たちにとって大事だとおっしゃっていました。

オンラインではありますが、ワークショップ形式で思考し、その結果をチャットに書き込んで、そのチャットに齋藤先生が答えてくれるという双方向型の学びができて、本当に良かったです!

講義の最後には、学生の保護者へのメッセージもいただきました!そのメッセージは「選ぶ」ではなく、「解く」・「創る」に焦点を置くということです。今までの考え方では、子どもの未来、例えば文理選択、どの学校に進むか、会社はどこがいいのかなどを「選んで」きていました。しかし、これからは、子どもたちの見つけた課題を解くため、未来を創るために、あるものの中から選ぶ必要のないこともたくさんあって、そして親自身も「解く」・「創る」をして、未来をつくることを考えてほしいというメッセージでした。現地受講をされた保護者も、とても納得していたのが印象的でした。

第8期の最終講義としてふさわしい、最高の講義でした!齋藤先生、ありがとうございました!
今期の全ての講義が、あっという間に終わってしまいましたが、多種多様な学びを今後も続けて欲しいですね。来年度の第9期の講義にも是非参加してほしいと考えております。