3月11日(土)に茨城高等学校・中学校にて、第3期の最終講義である「第6回講義」を行いました。あっという間の1期でしたが、最後の講義は晴天で実施することができました。

当日は東日本大震災から6年が経過した日だったため、参加者全員で黙とうをして、あの日のことを忘れず、一生懸命に学び、生きていくことを再確認してから開始です。

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今回の講義は、国立天文台・JAXA/宇宙航空研究開発機構の宮川広先生による「世界一過酷なアタカマ砂漠でのアルマ望遠鏡建設の秘話」です。学生たちにとって想像しやすい題目である以上に、”宇宙”と聞くだけで、目をキラキラさせてもらえます。

講義はアルマ電波望遠鏡が実際に稼働している国、チリについての話から始まりました。宇宙開発に適する環境条件や稼働場所をチリ北部のアタカマ砂漠にフォーカスした理由などを教えて頂きました。宇宙開発には素晴らしい機器だけではなく、環境までもが大きくかかわってくることを知り、新しい発見も多かったです。また、標高5000メートルもあるアタカマ高原での活動秘話を話していただき、そこでの苦労は、言葉で聞いても過酷でしたが、現場はそれ以上に大変なことだったと推測できます・・・。

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その後は、宇宙の話に変化をして、宇宙とは「こんなに広い!」「可能性は無限大!」ということを強く話してくれました。宇宙の広さを体感できるように、第2期での石原正雄先生が説明してくれた「MITAKA(天文ソフト)」を使用し、自分たちが宇宙船に乗って地球を離れ、月・太陽系・銀河系・そしてその外側まで宇宙の小旅行をした感覚に大興奮。

現在は「138億光年」離れた星まで見ることが出来ますが、その先はまだ未知の世界のため、本日受講した学生の中からその先を見つけることが出来る人間が誕生したら最高ですね!実際MITAKAを見た学生から「こんな世界があるんか!」との言葉が出ていましたので、期待したいです。

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休み時間は、学生たちが宮川先生の周りにたくさん集まり、サイン攻めと質問攻めでした。講義で疑問に思ったことを質問していましたが、自ら疑問を持ち、解決する力を小中学生の間から積み重ねることを習慣化してほしいと私たちは心から思っております。

宮川先生(休み時間)

後半戦は「電波望遠鏡の歴史」「アルマ電波望遠鏡」についての話から再開です。電波通信には地球の電波層を利用していることや、小中学生にはまだ馴染みのない周波数の世界にも触れたので「周波数とは?」を自分なりのイメージをもち、少しずつ学びを深めることができたはずです。また、何億光年先の電波が地球に到達していることと、それを偶然にも発見したことから電波望遠鏡の開発が始まったことも学べました。

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そして最後に、アルマ電波望遠鏡についての話です。20か国が協力して稼働しているアルマ電波望遠鏡は、開発に様々な国の人間が携わるため、文化の違いや考え方の違いによる苦悩があったり、エンジニア・科学者の特性の違いを詳しく解説してくれたのは興味深かったです。(第4回の長井先生、第5回のステファン先生から学んだグローバルマインドセットでも国の文化の違いに触れました)

アメリカ、ヨーロッパ、日本が作る望遠鏡にはそれぞれの特徴があり、性能面で世界No.1を誇る日本製のすばらしさを実際の経験を交えながら伝えてくれました。その背景にあるのは日本人の真面目さであり、その国民性が世界トップレベルを支えているのだと日本人の性質を再確認できたと思います。

そして、その国民性は望遠鏡の設計だけに現れるのではなく、建設後の行動でも現れたようです。それは、日本以外の国は運用が始まる直前に望遠鏡建設を終えたようですが、日本だけは完成期日の「1か月前」に建設を終え、残りの時間で現地の管理者のスキル向上のための時間にあてたとのこと。「作ったら終わり」ではなく、その後にかかわる「人」を思いやることまで考えて、当初から計画・行動したことは、相手の立場に立って行動できる日本人としての強みだと感じるとともに、日本人としての誇りを学ぶことが出来ました。

宮川先生(講義)
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宮川先生の講義で「第3期」の全ての講義が終了しました。
第3期でもたくさんの驚きと学びがあり、世界・日本のトップレベルの学びを体験することが出来ました。この学びを第4期でも続けていってほしいと考えています。