12月17日(日)に、智学館中等教育学校にて「年末特別講座」を実施しました。京都大学名誉教授・阿辻哲次先生による「漢字と私たちの暮らし」です。

今回の講座は「株式会社ブックエース」様との共催イベントです。昨年夏に実施したリアル恐竜ライブショー「DINO-A-LIVE」に続く第2弾コラボ企画でした!

開会のあいさつを「中村昭彦会長」から頂きました。中村会長からは、本を読むことの大切さや今回の阿辻先生の講義からたくさんの学びを持ってほしいとの言葉をを頂き、子ども大学水戸の説明とHRを開始。

今回は、前回の第4回講義で講義して頂いた「的川泰宣先生」の話にも出ていた「金井宜茂宇宙飛行士」がソユーズに乗ってISSへ出発することや、日本生まれの日系イギリス人「カズオ・イシグロ先生」がノーベル文学賞を受賞したことなどを確認しました。そして最後に、今年の漢字である「北」の話をしてから、阿辻先生の講義へ!

阿辻先生の講義は、ご自身のプロフィールから始まり、ハンドアウト(配布資料)に書いてある文字で、自分の好きな漢字・カタカナ・ローマ字を選ぶことへと続きました。

先生の話で笑ったのが、HRで確認した「北」「金」など”今年の漢字”はあっても、今年の”ローマ字”や今年の”カタカナ”はないよね?の行です。確かに言われてみれば、今年のアルファベットは「A」です!や今年のカタカナは「ラ」です!とはならないですね。では、なぜ漢字だけ行われるのか?

それは、無意識のうちに漢字の中にある意味を潜在的に考えているからであるとのこと。音読み・訓読みがあり、その文字自体に意味を持っていて、漢字が組み合わさることで更に意味が増えていきます。

また、漢字はには特徴があって、表意文字であること、使用者人口が多いこと、使われている面積が広いこと、書物や記録が豊富であること、縦書き横書きが自由あること、そして好き嫌いがあることを学びました。

ただ、一方で漢字の多いのも事実であって、その原因として阿辻先生は3点挙げられました。
➊字数(字種)が多いこと
➠中国の『中華大字典』・日本の『大漢和辞典』では約5万字あり、『漢語大字典』では6万字、『中華字海』では約8万字が掲載されている。

➋画数が多いこと
➠むかし使われていた旧字体の平均画数は15画前後で、多いものでは30~40画に達し、20画以上あるものも少なくない。ひらがな・カタカナ・アルファベットの文字は多くても3画である。

➌構造が複雑である。
➠漢字はヘンとツクリの組みあわせで作られるものが多くヘンやツクリだけでも数百種ある。

前半戦の最後には、世界で一番画数が多い漢字についても学びましたが、下の漢字を見て読めますか?
『大漢和辞典』は、「龍」という字を4つ並べた漢字が64画で、もっとも画数の多い漢字となっているようです。ちなみに、小学校で学ぶ漢字で一番多い画数を持つ漢字は「鑑」で23画だそうですね!(解答は最下部に記載してあります)

休み時間には阿辻先生の周辺には行列ができ、サイン会を実施しました。
ブックエースさんに、特設販売会場を作っていただいたので、KADOKAWAが23年ぶり改定した「新字源」を購入して、サインを求めている学生も多数いました。(時間的に全員へのサインはできませんでした。申し訳ありません)

後半戦は、漢字の成り立ちを学習!
漢字は、甲骨文字が祖先となっており、紀元前1300年前後から存在し、文字通り亀の甲羅や鹿の骨などに刻まれ、全体の形やその一部をみて分かるように文字が出来ていったようです。

例えば「家」という漢字は、屋根の下に「豚」がいることから成り立っており、家は大切な家畜と住む建物という意味であること。他にも林・山・川・牛などの成り立ちについて学びました。成り立ちを学ぶことが出来れば、漢字を覚えるのがとても楽しくなりますね。

講義が終わると、学生からの質問があり、その中で面白かったのが「まだ無い漢字はありますか?」の質問です。回答は、中国で生まれた漢字だから、そこで存在していないものは漢字として存在できない、とのこと。よく考えれば当たり前ですが、だからこそ学びは深まっていくわけですね。

なお、現在「象」は中国にはいないが、甲骨文字には存在しているのは、当時の中国には象が存在していたからだそうです。時代環境と一緒に学んでいくと、素晴らしく知識が深まります。(生徒たちには難しい話が多かったかと思いますが、大人の方々はとても納得していました)

最後に阿辻先生から、漢字はハネ・トメなどが違うとバツになるから嫌になるのであって、先ずは楽しんで学んでほしい。今後の学びや研究はここにいる次の世代が引継ぎ、研究や新しいことを実現してほしいとメッセージを送ってくれました。阿辻先生、ありがとうございました!

(※解答ですが、音読みは「テツ」!「口数が多い」という意味)
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この年末特別講座で、年内の講義は全て終了となりました。
次回は2月3日(土)に茨城高等学校・中学校にて第5回講義を実施します。株式会社竹中工務店の「ものづくり、かたちづくり」です。ワークショップを中心の講義ですから、お楽しみに!