7月11日に開催された「第2回講義」は、ソニー株式会社R&Dセンター・シニアディスプレイエンジニアの平井基介先生をお招きし、「蛾」の目の仕組みがディスプレイに?〜エンジニアリングと世の中のつながり〜」のテーマで講義を実施しました。(第2回講義からは、配信会場で聴講していただける親子を、抽選で5組10名招待をしております。)
まず、平井先生の自己紹介から始まり、「SONY」という会社はどんな会社なのか?どんな製品を作っているのか?など、アイスブレイクとして会社紹介をしながら、平井先生が開発に携わった、資生堂グローバルイノベーションセンター内にある、世界最大のCLED(クリスタルLED)の話へと移っていきました。(資生堂のCLEDは横約20メートル、縦約5メートルの大きさで、見るものを圧倒する規模です!)
またアイスブレイクの続きで、平井先生がエンジニアとして、どのような時間の使い方をしているのかをグラフにして頂いたので、エンジニア=モノを作るイメージを持っていた学生も多かったのですが、エンジニアの一日をイメージすることができたと思います。時間の使い方はとても重要であり、可視化することで、無駄が見えてくるというメッセージを頂きましたが、これは、エンジニアだけではなく、全ての人間においても大切なことですね。
そして、講義はディスプレイの話に移っていきました。平井先生はディスプレイの開発を行っていますが、そのディスプレイは大きく分けて2種類あり、有機EL、LCD(液晶)、LED、電子ペーパー等の「直視タイプ」とプロジェクターやホログラフィックなどの「投射タイプ」に分けられるとのこと。それぞれ様々な特徴があり、例えば、有機ELは、第1回講義の江守先生の話にも出ていた、エネルギー効率が良く、消費エネルギーが少なくても済むのが特徴ですが、単価が高いのが問題であることや、電子ペーパーは更にエネルギー効率が良いのだが、暗いところでは使用が難しいなど、一長一短があるとのことです。万能なディスプレイの開発は難しいですね。
また、直視・投射のどちらのタイプも、光の「波(波長)」と「粒子」の性質が大きく関係をしていることを学びました。波長は波の長さのことであり、人間が認識することができる波長は400~800ナノメートルで、他の動物だと認識する波長が変わっていくようです。(※1ナノメートル=10億分の1m)
光は直進し、何かにあたると「反射」しますが、表面がデコボコしていると光が「散乱」したり、水などの場合は「屈折」したりする特性を持っています。明るい外でスマホのディスプレイを見ると、最初は見えないですが、最近のスマホは明るいと勝手に「白」を強く発光してくれることでコントラストがはっきりするようになります。
コントラストは、明るい部分は明るく、暗い部分は暗いと鮮明に見えることで、例えば、灰色のノートに黒い鉛筆で書くよりも、白いノートに黒い鉛筆で書いた方が分かりやすいように、ディスプレイでもその差(コントラスト)が大きい方が見えやすいものになることです。
では、このコントラストをはっきりするには、どうすればよいのかというと「反射防止フィルム」を装着するのがよいようです。反射防止フィルムの理屈として、反射防止フィルムの表面にはものすごく小さい凸凹があるので、光を反射しないようになっているからで、この発想は「蛾の目」から考えられたとのこと。
蛾を英語で「モス」、目は「アイ」ですから、モスアイと言われているようです。目のつぶつぶの大きさは100ナノメートルで、なぜ“つぶつぶ”になったのかというと、目が光ってしまうと敵に見つかってしまいますし、弱い光でも目の中に光を取り込めるように進化したと言われています。生物の進化はすごいですね!
平井先生たちは、この黒さをディスプレイに転用しようと考えたのですが、このモスアイをディスプレイに転用する上での問題が出てきているそうです。例えば、スマホに利用すると、スマホの表面を指で触るので油がついてしまいますが、モスアイのつぶつぶはものすごく小さいので、拭いても取ることができない為、なかなか転用が難しいようです。(ちなみに太陽光パネルは、人が触らないですし、光を反射させずに吸収したいので、モスアイを使い始めているようですね。)
最後に、自然と繋がっているテクノロジーが非常に多く、エンジニアリングは世の中・社会と繋がっているので、普段の不思議やなぜだろう?何とか解決したい!が繋がりのスタートであること。職業や役割は手段でしかないので、子ども大学水戸や生活の中で様々な話題に触れることで、世の中・社会と繋がってほしい。と伝えてくれました。平井先生、ありがとうございました!
次回の講義は「夏の特別講座」となります。慶應義塾SFC研究所の山崎総一郎先生による「こども六法」を学ぼう!です。お楽しみに♪