【第7期第1回講義特別編!】
「気候危機とコロナ危機 ~ダブル危機の中をどう生きるか!~」
国立環境研究所 地球環境研究センター
副センター長 江守 正多 先生

大変お待たせいたしました!2020年6月20日に行われた第1回講義にご登壇いただいた、国立環境研究所 地球環境研究センターの江守先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
感想を含めいろいろな質問をいただいた中、余りにも数が多いため、皆さんからの質問が多く、先生だからこそお答えいただける専門的な質問にまとめてお願いをしていますが、それ以外にも、たくさんの質問にご回答いただきました。
江守先生のの追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!


【国立環境研究所 地球環境研究センター 江守先生がみんなの質問に答えます!】

★質問1.地球温暖化をなくすためには具体的に何をするのが1番良いのですか。

CO2を出さずに社会に必要なエネルギーを作ることができるように、石炭、石油、天然ガスの利用を、太陽光発電、風力発電などの利用に変えていくことです。そのために、政治や企業や地元自治体に興味を持って、意見を言えるようになってください。


★質問2. 地球温暖化はコロナウイルスの蔓延に関わっているのでしょうか。

温暖化は今回のウイルス蔓延の原因に直接関わってはいないと思います。しかし、両方とも人間が自然を変え過ぎた結果として起きた問題だととらえることができます。その意味では関係があります。


★質問3. 地中に温室効果ガスを溜めることに問題はないのでしょうか。

大きな問題は無いと思いますが、地震が起きやすくなるのではないか、漏れ出てくるのではないか、といった心配もあるため、それらを調べながら実験が行われているところです。


★質問4. 地球温暖化以外に人間が環境に悪影響を及ぼしていることはありますか。

大気汚染、海洋汚染、生態系破壊、オゾン層破壊といった問題があります。調べてみてください。


★質問5. 再生可能エネルギーの技術はどれくらい進歩していますか。

とても進歩しています。世界ではすでに太陽や風力で化石燃料よりも安く発電できる地域がたくさんあります。蓄電池も安くなってきているので、発電量の変動もコントロールしやすくなってきました。


★質問6. 自然エネルギーや再生可能エネルギーの他にも、CO₂を出さないエネルギーはあるのですか。

原子力発電があります。しかし、事故の心配や放射性廃棄物の問題があるので、CO2以外のことも考えて、使うかどうか決めるべきです。また、火力発電で出てきたCO2を地中に埋めてしまう方法でも、CO2は出ません。


★質問7. 江守先生が思う、一番効率が良い再生可能エネルギーは何ですか。

一番効率がよいかはわかりませんが、これからも一番増えるのは太陽光発電と風力発電でしょう。


★質問8. 環境に興味を持ち始めたのはいつからですか。

高校2年生のときに、チェルノブイリの原子力発電所事故というのがあり、それをニュースなどで見ていて、エネルギーや環境に興味を持ちました。


★質問9. この仕事をしていて楽しい事は、何ですか。

自分がいろいろ調べて、考えた意見を、みんなに聞いてもらえることです。そして、みんなからも様々な意見を聞くことができることです。


★質問10. 気候問題について分かりやすく、詳しく書かれている本があれば教えてください。是非とも読んでみたいです。

中学生くらいから読める本を3つ紹介しておきます。小学生でもがんばれば読めると思います。
・地球温暖化は解決できるのか 小西雅子著
・13歳からの環境問題 志葉玲著


★質問11. どうして木の年輪の幅が太いか細いかで気温がわかるのですか?

年輪は1年に1本刻まれるわけですが、暖かい年には木がよく育つので幅が太くなり、逆に寒い年には育ちが悪いので細くなります。


★質問12. 世界に地球温暖化を認めていない人はどれくらいいるのですか?

国によって違いますが、アメリカでは特に多くて1/3くらいの人が人間活動による温暖化を認めていません。トランプ大統領のように石炭石油業界を守るために温暖化を認めないという人たちが多いようです。


★質問13. 気温の上昇により海水中の二酸化炭素が溶け出しているだけで、二酸化炭素が温室効果ガスであるとは言いきれないと聞いたことがあります。二酸化炭素が温室効果ガスであることの検証はどのように行われているのでしょうか?

二酸化炭素が温室効果ガスであること、つまり赤外線を吸収、放出することは、物理学の理論でも、実験でも、非常によく理解され、検証されています。


★質問14. 気候シミュレーションで北極圏が上昇するのはなぜですか?

気温が上がると北極海の氷が減るためです。氷は日射をよく反射しますが、氷がなくなると海面が日射をよく吸収します。するとさらに気温が上がり、さらに氷が減り、さらに日射を吸収し、さらに気温が上がるという悪循環になります。他にも理由がありますが、これが一つの重要な理由です。


★質問15. 2008年ごろに、二酸化炭素排出量が落ちているのはなぜですか?

世界金融危機(リーマンショック)で経済活動が弱まったためです。


★質問16. 世界で一番温暖化対策が進んでいる国はどこですか?その国はどんな対策をしているのですか?世界中の国がその対策をまねすることはできますか?

ヨーロッパの国々では、太陽や風力などの再生可能エネルギーでほとんどのエネルギーをまかなっているところがあります。世界中がまねをすべきですが、国によって簡単なところとそうでないところがあります。日本は国土面積に比べて人口が多いので難しいですが、時間がかかってもまねをしていくべきと思います。


★質問17. 日本はあとどのぐらい海面が上昇すると沈んでしまうのですか?

日本が完全に沈んでしまうことはありませんが、海面が1m上がれば、砂浜はほとんどなくなってしまいます。


★質問18. 太陽光パネルの設置を推進することで、森林伐採と農地の削減が進んでいるように思います。本当にCO₂排出量低減のために有効な対策でしょうか?

森林伐採は大きな問題です。今後は人々が納得できる場所に太陽光パネルを設置するように見直されていくでしょう。農地については、農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングというやり方があり、これを増やすのはよいと思います。


★質問19. 環境問題から目をそむけている人を説得するにはどうすればいいですか?

どうしても興味がない人を説得する必要はないと思います。社会の仕組みが変わって、すべての発電が太陽や風力になれば、興味がない人でもCO2を出さなくなるからです。


★質問20. 弱いひとはCO₂を排出して強くなろうとし、強いひとは弱いひとに対してCO₂を排出するなと言いますが、根本的な解決をするにはどのような対策がよいのでしょうか?

CO2のことだけでいえば、強いひとがCO2を出さない技術でお金がもうかるようになればよいのだと思います。ただ、根本的には、弱いひとを助ける社会の仕組みが必要です。


★質問21. 地球上に、人間は増えすぎてしまったのでしょうか?

生物として見ると、そのとおりだと思います。しかし、増えてしまった人間の一人一人には生きる権利があるので、減らせばよいと考えるのも難しいです。貧しい発展途上国で人口が増えているので、彼らに早く豊かになってもらって人口増加が収まるようになるとよいと思います。


★質問22. 地球の異常気象で困っている国はどこですか?

ほとんどすべての国で洪水や熱波の被害が増えて困っています。特に困っているのはアフリカや中東などの乾燥地域で雨が減って水や食料が無くなってしまう人たち、バングラデシュのような沿岸地域や小さい島国で、海面上昇や高潮の被害を受けて住むところが無くなってしまう人たちなどです。


★質問23. 人工的に空気中の二酸化炭素を減らす機械は発明されると思いますか?

発明されると思います。お金さえかければ、技術的には今でもできます。安くできるように研究をしている人が出てきています。


★質問24. どうやって再生可能エネルギー比率を増やすのですか?道筋は何ですか?

1. 安くすること、2. 電線にたくさん接続できるように電線を整備すること、3. みんなが納得いく場所に設置するルールを作ること、4. 太陽光や風力が変動しても、停電しないように電気をコントロールできるようになること、です。どれも今その方向に向かって進んでいます。


★質問25. 石油石炭天然ガスが今ゼロになったらどのような生活になるのでしょうか?

今すぐゼロになったらけっこうたいへんなので、30年くらいかけてゼロにしていきましょう。


★質問26. 炭素税について賛成ですか?

賛成です。なぜかというと、CO2をたくさん出す会社が損をして、CO2を減らす会社が得をするようになるからです。電気が高くなってみんなが節約するようになるからではありません。


★質問27. 山に作ると木をたくさん切るようになってしまうため、太陽光はどこに作るのが1番いいと思いますか?

家やビルの屋根にまだたくさん載ります。昔農地だったけど今は使っていない土地(耕作放棄地)もいいですし、農業をしながら太陽光発電と両立するソーラーシェアリングもいいです。


★質問28. 再生可能エネルギーはぜったいにCO₂がでないんですか?

造るときや運ぶときや捨てるときに、少しは出ます。しかし、化石燃料に比べると圧倒的に少ないです。


★質問29. あと30年でCO₂の排出量をゼロにするとは本当にできるのでしょうか?私的には地球のためにはゼロにしたいと思っていますが、私たちが活動することによりCO₂が発生し、コロナで自粛していてもCO₂の排出量は変わらない…エネルギー消費量を減らすことによってCO₂排出量を減らすのは一人一人の努力でしょうが、今の生活のレベルを下げるのは困難かと思います。CO₂排出量の少ない既存のエネルギーといえば原子力発電ですが、福島の問題で停止しています。その代替エネルギー源として火力発電がフル稼働していますが、たくさんのCO₂を排出しています。火力や原子力に比べて洋上風力発電や太陽光発電は発電量が小さいのではないでしょうか?設置のために逆に自然環境を破壊してしまうのではないでしょうか?蓄電システムもまだ実用的にはなっていません。発電量とコスト面を考えると自然エネルギーは有効な手段なのでしょうか?それとも他に有効な手段はないのでしょうか?

日本の太陽や風力はもし全部開発すると、日本のエネルギー消費量の何倍もエネルギーを供給できる可能性があります。蓄電システムも次第に安くなってきています。本気を出せば30年でできないことではないでしょう。


★質問30. 世界で見ると石油を使った発電は増えているけれど、日本ではへっています。どの国がこのエネルギーを多く使っているのですか?

今、石油や天然ガスの消費が増えているのは、中国、インド、東南アジアなどの工業化を進めている国々です。


★質問31. 風力発電のブレードに鳥が当たらない工夫はありますか?

AIで画像認識して、鳥が来たら通してあげるというアイデアを聞いたことがあります。


★質問32. 地熱発電は分かりますが、その他に何かないと再生可能エネルギーは、完全にはできないと思うので、日本に適した発電は何ですか?

日本は海岸線がたくさんあるので、洋上風力発電には特に有利だと思います。


★質問33. 先生はグレタさんに賛成ですか?先生とお会いしてもう少し詳しくお話が聞きたいです。どうすれば良いでしょうか?

僕はグレタさんを尊敬しています。
僕と話したい方は、国立環境研究所の広報窓口に連絡してください。1人ずつより、グループの方がありがたいです。


★質問34. 私は英語の授業でグレタ・トゥンベリさんのことについて勉強をしました。日本では様々な意見が出ていますが、先生はグレタさんのスピーチや行動についてどうお考えですか?

グレタさんを尊敬しています。詳しく書いたので読んでみてください。
https://news.yahoo.co.jp/byline/emoriseita/20190928-00144493/


★質問35. 環境デモはどこでやっているのですか?

Fridays for Future Japanで検索してみてください。


★質問36. 電気自動車は普及すると思いますか?

普及すると思います。時間の問題です。


★質問37. どうしたら社会の大転換を起こせますか?

こうすれば必ず起こせる、というやり方はありません。いろんな人のいろんな行動が積み重なった結果、ある時思いがけずに起きる、あるいは気が付くと起きているのだと思います。それに自分も参加するつもりで行動すればよいのだと思います。




江守先生、お忙しい中ありがとうございました!