【第6期第1回講義特別編!】
「見えないけど身近な「ダニ」のひみつ、教えます。」
国立環境研究所 五箇 公一先生

第6期が始まりました! 入学式も兼ね、2019年6月22日に行われた第1回講義にご登壇いただいた、国立環境研究所 五箇 公一先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
感想を含めいろいろな質問をいただいた中、余りにも数が多いため、皆さんからの質問が多く、先生だからこそお答えいただける専門的な質問にまとめてお願いをしています。
2回目の登壇となった、五箇先生の追加の特別講義、ぜひ読んで学んでみてください!


【国立環境研究所 五箇公一先生がみんなの質問に答えます!】

●質問1.生物の新種を見つけたさいに、どのようにして新種と断定するのですか。また、先生が発見した新種の生物を断定するまでのエピソードなどがありましたらお聞かせください。

新しい種が見つかった場合は、それぞれの分類群の専門の分類学者がそのサンプルの形態を細かく観察して、これま発見された種の形態と比較を行い、一致するものが何もなければ新種と判断して、記載論文を作成する。そしてその論文を世界に発表することで、新種発見のニュースが広まる。
私自身は分類学者ではないので、新種を自ら発見することはありませんが、沖縄でハダニを採集して、アロザイムというタンパク多型を調べたら、これまで見てきたパタンと全く異なるパタンが見られたので、そのサンプルを分類が専門の先生に送って調べてもらった結果、新種であることがわかりました。ナンゴクハダニという名前がつきました。


●質問2.生物が農薬に対して抵抗を強めていく中で、農薬をより強いものにすることによる環境への悪影響はあるのでしょうか。

薬剤抵抗性が発達した場合には、全く新しい別の作用性をもつ薬剤を開発する必要があります。作用性が異なるので、そのほかの生物に対する影響の仕方も変わってきます。それまで影響を受けていた生物が増えたり、逆にいままで影響がなかった生物が減ったりすることもあります。


●質問3.ダニは、そもそもどのような理由でうまれたのですか。また、何が進化して生まれたのでしょうか。

大昔はウミサソリなどの海中の節足動物が祖先とされ、それが陸域に進出して、多足類やクモの仲間、昆虫類などへと多岐にわたる節足動物に進化し、その一派としてダニも進化しました。


●質問4.五箇先生は生き物の研究を進めるにあたって気を付けていることはことはなんですか。また、その理由もお聞かせください。

特に気をつけていることはありません。
研究スタイルは自由です。とにかくよく観察して、よく調べて、記録する、これを徹底するのが研究です。


●質問5.ダニは、重力の影響をあまり受けないため飛ぶことができるとおっしゃっていましたが、単純にダニの力だけで飛べる高さはどれくらいですか。

ダニは自力では飛べません。


●質問6.様々な種類の生物において「生きた化石」と呼ばれる生物がいますが、ダニにもそのような種はいるのでしょうか。

ダニは化石があまり残っていないので、生きた化石と呼べる種がどれくらいいるかは不明です。ほとんどの種がその姿形はかなり昔に進化していると思われ、ダニという生き物自体生きた化石と言っていいかもしれません。


●質問7.ダニは食べられるものもいるとのことでしたが、どのような栄養素が含まれるのでしようか。また、近年ミドリムシなどの微生物や虫を栄養素として食べるということがありますが、ダニもそのような利用をされるのでしょうか。

タンパク質とミネラルが豊富に含まれると考えられます。量産は難しくありませんが小さいので回収が難しいと思われます。


●質問8.五箇先生は、民間企業の研究部門から現在は、国立環境研究所にいますが研究環境としての違いはどのようなことがありますか。

民間企業は商品開発が主目的であり、研究の自由度は必然的に狭くなります。また商品が売れないと、研究部門そのものの存続が難しくなるため、いっそう自由な研究は難しくなります。一方国の研究所では、国策のための研究が目標となりますがそのための基礎情報の収集も必要となるため幅広いテーマで研究を行うことができるとともに行う必要があります。自由度が高く、倒産することもないので、場合によっては「論文を書かない」怠け者が生み出されやすく、そうした研究者を生み出さないようにするためのシステムが求められます。


●質問9.五箇先生にとってダニとの出会いは人生の転機とのことでしたが、転機に差し掛かかったときはどのように行動すべきでしょうか。

自分の感性、ひらめきを信じることです。


●質問10.五箇先生にとってダニとはなんですか。

人生の相棒です。


五箇先生、お忙しい中お答えいただきまして、ありがとうございました!