11月16日(土)に、茨城高等学校・中学校にて第4回講義を実施しました。寒い日でしたが、天気が良く晴れ晴れとした中での講義日となりました!

今回の講義は、JAMSTEC・海洋研究開発機構「しんかい6500」現役女性パイロットである、飯島さつき先生による「あなたの知らない「しんかい」の世界」です。

前回の第3回講義が台風の影響で開催できませんでしたので、7月の第2回講義以来の久々の講義となります。

講義の前には、子ども大学水戸の学びの本質であるHRから開始です。日ごろからNEWSを見ることで、社会がどのように変動しているのかを感じてもらうことを目的としております。今回のHRでは「ノーベル賞」についての知識と歴史、吉野教授の化学賞の話と、沖縄の火事、SDGsとマイクロプラスチックの話をしました。前回の講義が中止となったように、温暖化などが原因とされる巨大台風は、今後は当たり前になっていく可能性も高いです。日々の情報から様々な事を感じとって、学びを深めて考えて行く事が益々重要となっていきますから、その辺りも学んでほしいと考えております。

HRが終わると、いよいよ講義です。
講義は飯島先生の自己紹介から始まり、深海の定義や潜水船の歴史を学び、その上で飯島先生が搭乗している「しんかい6500」の学びへと移っていきました。

深海に潜るほど水圧がかかるわけですから、そのために様々な工夫がされているとのこと。この辺りは昨年登壇して頂いた「大西先生」の講義でも学習しましたね。ですから、学生の中から、機械が壊れない理由は、「耐圧構造」と「均圧機構」があることを覚えていたようです。(深海生物のシーラカンスとしんかい6500は同じ機構とのこと)

「パイロットになりたい人はいますか??」との問いに、学生たちから10人程の挙手が!将来のパイロット希望の学生にとって気になるのが、「どうやったらなれるのか?」ですが、パイロットになる条件として「体重100kg」でも問題なく、しんかい6500の入口に入ることができることが条件とのこと。「おっ、僕はなれるよ!」との声が会場から聞こえてきました。今は問題なくても、10年後にも体格を維持しなければなりません・・・・。

船内は酸素が不足するので、医療用でも使われる酸素ボンベを使っていることや、船内での食事が、以前は「サンドイッチ弁当」だったが、最近は「おにぎり弁当」もあるようで、飲み物も「お茶」「コーヒー」なども選べることなど、パイロットからの㊙情報をたくさん教えて頂きました。

休憩時間には、飯島先生のサインを求めて、長蛇の列が!
一人ひとりに声掛けをしながら、サインをしてくれました。

後半の講義では、しんかい6500は総重量26.7tあり、その重量を水バラストタンクの調整で浮かせたり、沈んだりさせることや、船内には緊急時の「㊙ボタン」があり、そのボタンを押すと色々なものが切り離されて浮上するシステムとなっているとのことなどを学びました。

特に緊急ボタンを押した場合、上部にあるフタが空いてブイが出てきて、海上に知らせることで、外部からワイヤーで救助されることを知った時は、「すげー」との声が!どんな状態になっても、搭乗者の命を第一に考えるリスクマネジメントの大切さを教えてくれました。

そして、本日の講義の中核である、飯島先生の主な仕事の一つ「海底の調査」についても話してくれました。ベースメタルや貴金属、レアメタルなどの調査をしていく中で、マンガン団塊などが、日本の周辺海域にあることが分かってきているようです。最近特に注目されているのが、水深700m~3000mに金銀銅亜鉛などが生まれる「海底熱水噴出孔(チムニー)」で、海底に眠っている資源をどう採掘していくかの研究やロボットを使って採掘したり、調査をしたりするなど、魅力的な仕事内容を教えてくれました。

しかし、深海の世界に大きな問題が出てきているようです。それは「プラスチックゴミ」!!
海に流れたプラスチックゴミは、分解されずに海底に落ちていき、堆積していきます。その状況は世界で一番深いと言われている「マリアナ海溝」でも同じようで、世界中のどの海でもプラスチックゴミが堆積し、生態系への影響やしんかい6500などの探査船にも影響が出てきているとのこと。実際、世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみの量は「1億5000万トン」とも言われており、このままの社会であれば、2050年には魚の数よりも多いプラスチックゴミが出てしまうと予測されています。

映像として流された海底動画は2001年でしたが、現在はそれよりも確実に増えているようで、今後は益々プラスチックごみの問題と向き合わなければならないと伝えてくれました。最後の質疑応答では、保護者の方から「海底に堆積しているプラスチックゴミの収集方法」について質問がでましたが、現段階ではまだ効率よく回収する方法が無く、出来てもコストが高いなどの問題が出ているようです。

今後の問題としてこれらの問題解決をするには、技術的にもアイデア的にもまだ不足しているようなので、未来の研究者に期待されますね。

飯島先生、ありがとうございました。今回の講義を聴いた学生の中から、プラスチックゴミの問題を解決したり、しんかい6500の後継者が出てくると思います。

次回は、年内最後の講義である「年末特別講座」を12月7日(土)に智学館中等教育学校にて実施します。株式会社KADOKAWAの坂倉基先生による「校閲の仕事」です。お楽しみに♪

※今回の講義は、一般の方も参加して頂ける「特別企画」です。子ども大学水戸の学生からの紹介を貰って、公式Websiteからご応募ください。