12月7日(土)に智学館中等教育学校にて「年末特別講座2019」を実施しました。12月に入ってから寒い日が続いており、降雪予報も出ておりましたが、小雨の寒さの下での実施となりました。

今年の年末特別講座のテーマは、株式会社KADOKAWA・坂倉基先生による「編集/校閲の仕事」です。坂倉先生は、2017年に23年ぶりに改訂された「新字源」の編集者として担当されていました。数多くの文字や例が書かれている辞書を作る上で、どのような苦労や注意点が必要なのかを交えながら、校閲の重要性を学びます。

まず講義は「校閲」や「編集」ってどんなものか?という説明から開始!
作者が書籍を書き、消費者が書籍を買う「書店」に行くまでのプロセスとして、以下のような流れと役割があるようです。

作家
**********
★編集・・・どんな本を作るか、作家依頼、原稿を読みやすくする、題名決め、発売日を決める

★校閲・・・誤字や脱字の確認、ファクトチェック(正しいかどうかの確認)、用字用語、文章体裁の統一確認

★制作・・・紙選び、デザイン決め、物体としての本をつくる

★営業・・・商品としての本を売る。たくさん売る。様々な企画を実行する
**********
書店

校閲の仕事として、文字や文章、内容が「正しい」か「間違っている」のチェックをするわけですが、問題は「正しい」ことの定義・証明だそうです。

辞書によると、「正しい」とは
・まちがっていないこと
・事実とあっていること
・嘘ではないこと
・確かなこと、確実、的確

とありますが、実際に正しいを証明するのは大変難しいですよね。
何故なら、自分の考えがあっているか分からないし、自分の知識が間違っているかもしれない。他にも、誰かに教えてもらったから正しい?自分の目で見たことだから正しい?インターネットで調べたら正しい?など正しいを証明するのは難しいからです。

坂倉先生は、例として「青りんご」の写真を出して、「これは青りんごですか?」と尋ねました。
もしかすると「青りんご」かもしれませんし、「赤い」りんごが若いだけかもしれません。だからこそ、すぐに判断するのではなく、生産者に聞いたり、八百屋に聞いたりするなど、調べることが非常に重要だと伝えてくれました。

他にも、校閲のポイントとして、相対的貧困の話を例にとって、世界的には劇的に改善されているが、日本は1999年~2012年の13年間で貧困者が増えていることなどの事実を通して、

・校閲はできるだけいろいろなものをみたり、多くの人に聞いて確かめることが必要
・多くの人が正しいとする人に聞いたり、もので確かめる
・データを自分で確認する

などが重要であることを学習して、前半戦が終了です。。

今回の年末特別講座は、ブックエース様にもご協力を頂き、出張販売会も実施しました。
昨年の新野先生が監修として「どっちが強い!?」シリーズやこども六法など、多岐にわたる分野の書籍が販売され、たくさんの親子が本を購入してくれました。是非、多種多様の書籍を読んで、知識や感性を高めてほしいですね。

後半戦はファクトチェックでした!
ベストセラーになった「ファクトフルネス」と同じように、文章から事実を読み解くワークショップです。学生だけではなく、保護者の方にも配布をして、ファクトチェックを全員で実施。

Q:今の人類(ホモ・サピエンス)が登場して以来、世界中の人間はゆっくりと増え続けて、今年で77億人になった。
➡一部正しい

Q:20年以上も生きると言われるハダカデバネズミは年は取って老化しない
➡正しい

Q:奈良の大仏の頭についているブツブツ(螺髪)は、全部で966個ある。
➡間違っている。歴史的資料には「966個」と書かれていたが、近年「492個」であることがレーザー解析で分かる

Q:日本の船の名前に「●●丸」というものが多いのは、法律で決まっているから。
➡一部は正しい。「船舶の名称にはなるべくその末尾に丸の文字を附せしむべし」とあったが、2001年に行政指導を止めた。

Q:「弘法にも筆の誤り」ということわざで、弘法大師(空海)がまちがえたのは「応」という字である。
➡正しい。「応天門」の「応」の字の最初の一画の点を書き忘れた。

実際の例を題材にして、思考プロセスを可視化することはとても大切な行為です。
言葉は知っていても、その背景や意味が分からなことも多いので、校閲のような思考を持って学ぶことがとても重要だと思った方が多いはずです。AIやIoTが発達すればするほど、「暗記」ではなく「探求」の要素が重要になってきていますので、楽しみながら背景学習をしてほしいと感じました。

最後に坂倉先生から、国語力は、読解力と語彙力の2つの力で構成されており、

★「読解力」・・・正しい理解する力
★「語彙力」・・・正しく表現する力

と定義することができるので、たくさんの本を読んだり、調べたりすることをしてほしいとのこと。
坂倉先生、ありがとうございました!

今年の子ども大学水戸の活動はこの講義で終了です。
次回の「第5回講義」は茨城高等学校・中学校で実施します。
テーマは株式会社リバネスによる「生き物の設計図 ~自分のDNAを取り出そう!」です。お楽しみに♪