6月19日に開催された、「第1回講義」は、国立環境研究所・稲葉 陸太先生による、「プラスチックごみと食品ロス、どうすれば減らせる?しかも同時に?~解決方法を一緒に考えてみよう~」でした。環境学に関しては、第1回講義からテーマとして継続しています。

講義は、稲葉先生の自己紹介から始まり、専門分野である、今回の講義テーマについての説明へ。
新型コロナによる影響で、飲食店での食べ物の消費量が減り、生産者の食材ロスが多くなってしまいました。その問題を解決するために、テイクアウトやデリバリーを行うことで、食品ロスが減ってきましたが、その代わりに減らすべき風潮であったプラスチック消費が増えてしまいました。このシーソーのような問題を、どうすれば解決することができるのか?をみんなで考えてみましょう。というメッセージから講義開始です。

現在、プラスチックごみは、世界で3.8億トンもの量が生産されており、同時に同量のプラスチックがごみとして処分されています。また、そのうち800万トンが海洋に流れています。生産数にも驚きますが、海洋に流出している量の多さに学生たちも驚いていました。

それに対して、食品は世界で40億トンもの量が生産されており、そのうち13億トンが食品ごみとして処分されています。また、日本国内では、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品ロスが600万トンもあることがわかりました。個人で食品ロスを考えることはなかなかありませんが、飲食店やスーパーなどフードロスの原因は、我々の生活とも密接な関係をもっています。

環境問題は、何となくで考えるのではなく、数値的な根拠を学んだ上で、解決をする方策を考えることが必要であるということが分かりました。そして、これらの問題を科学的に考えるうえで、ライフサイクルアセスメント(LCA)を紹介!

LCAは、製品のライフサイクルを調べ、全体の環境負荷の量を測る方法です。この方法を利用することで、プラ容器や食品ロスを減らす方法を考えることができるそうです。例えば、プラスチックごみは、焼却、リユース、リサイクル、リフィル(詰め替える)、エネルギーへの変換、他県への移動、など様々な方法で処理されていきますが、どの方法が一番環境負荷が少ないのかが重要になります。

一番に思いつく方法として、プラスチックを焼却する方法がありますが、この方法だと二酸化炭素が放出されて地球温暖化への影響も出てしまうので、あまり大量に焼却ができません。では集めたプラスチックをリサイクルをするとよいのか?となると、こちらもリサイクルの過程で二酸化炭素が放出されるので、温暖化への影響が出てしまいます。

では、どちらの方が良いのか?となるのですが、LCAで評価すると、廃棄プラスチックをリサイクルすることは、焼却発電などに比べてエネルギー効率が高いということがわかるそうです。製品自体を見るのではなく、「製造の前」と「使用の後」も考える必要があるわけですね。(※ちなみに、日本国内でプラスチックをリサイクルしているからといって安心はできず、日本国内で生産した製品が世界全体に輸出されていることにも目を向ける必要があるそうです。)

後半の講義では、食品ロスについての話題へと移りました。
日本は食糧自給率が「約40%」。つまり半分以上を輸入に頼っているという状況です。これは、世界的に見ても深刻な状況で、日本はこれからもっと世界の国々と仲良くする必要があります。世界の食糧生産は40億tで世界廃棄物が年間13億tと全体の3分の1ほどの量なのに対し、日本の廃棄物は2531万tです。しかし、食品ロスの量は600万tで、これは世界の食糧援助量の1.4倍にあたり、とても無駄にしていることがわかります。もったいないですね・・・。

食品ロスが出る理由としては、多くの人も納得する、作りすぎてしまいピッタリ食べきることができないことや、見た目が悪くて廃棄すること、無駄に買っているなどの理由があります。日常生活から、その辺りを意識して生活をしていく必要があります!

また、食品と環境との関係性について、「肉」に着眼した話題へ!
日本人が肉を食べるようになってから日本には、牛がふえたそうです。そんな牛が環境に与える原因として考えられるのがゲップです。牛はゲップの中にメタンガスを含んでいます。メタンガスは、温室効果ガスであり二酸化炭素よりも温室効果があります。

つまり、牛が多いことは、それ自体が温暖化につながってしまうのです。牛のゲップの中にメタンガスが含まれてしまう原因は餌によるもので、最近では、牛がメタンガスを出さないようにする餌の開発もされています。また、牛の糞尿を垂れ流しにしてしまうと水質汚染にもつながり、これも環境には悪影響です。これらのことを解決するためにも肉を使わないようにするための対策が取られています。

その解決策の一つとして、代替肉があるようです。代替肉とは、大豆などから製造されていて、ハンバーガーのお肉の代わりに使用されています。お肉と比べて少しお値段は高くなってしまうそうですが、大豆なのでカロリーも低く健康と環境に良いところが利点です。以前に比べると味も良くなってきているようです(笑)。

後半戦の講義が終わると、質疑応答の時間です。Zoomにつないで顔を見せながら稲葉先生への質問を実施!
とても多くの生徒から、たくさんの質問ラッシュが。時間の関係上、すべての学生の質問を受けられませんでしたが、この積極性が非常に重要です。毎回の講義後に、質疑応答の時間がありますので、是非続けて質問をしてくださいね。

稲葉先生は、講義のまとめとして、「プラスチックごみは特に海に多くあり、生き物に被害をだしている。プラスチックは、使い捨てを繰り返して紙などにおきかえる必要がある。プラスチックごみは分別サイクルを確立して、環境に出さないべきだ。そして、食品ロスは、日本の量で世界の飢えた人たちを救えるぐらいある。食品ロスは、無駄なく買って無駄なく食べることが簡単にできる対策で、このように、色んな工夫で食品ロスとプラゴミの問題解決ができそう。」とおっしゃっていました。

学生たちには、この問題を解決するために、色んな意見や情報を探して、自由に考えて大人が考えつかない方法を見つけてほしいです。稲葉先生、ありがとうございました!

第2回講義は、7月10日(土)です。
一般財団法人リモート・センシング技術センターの遠藤 貴宏先生による「人工衛星で〇〇をはかる~地球上のどこで何が起こっているのか知りたいよね~」です。お楽しみに♪