【第8期第2回講義特別編!】
「人工衛星で〇〇をはかる ~地球上のどこで何が起こっているのか知りたいよね~」

一般財団法人リモート・センシング技術センター
環境解析グループリーダー
遠藤 貴宏 先生

お待たせいたしました!
2021年7月10日に行われた第1回講義にご登壇いただいた、一般財団法人リモート・センシング技術センターの遠藤貴宏先生より、皆さんの質問に対する回答が届きました!
感想を含めいろいろな質問をいただいた中、余りにも数が多いため、皆さんからの質問が多く、先生だからこそお答えいただける専門的な質問にまとめてお願いをしました。
遠藤先生の追加の特別講義、非常に詳しくお答えいただいております。ぜひ読んで学んでみてください!


【一般財団法人リモート・センシング技術センター 遠藤貴宏先生がみんなの質問に答えます!】

★質問1.人工衛星は色々な種類があるようですが、それら全ての機能を持ち合わせた万能型の人工衛星を作ることは不可能なのでしょうか。

人工衛星は、太陽光パネルで発電しています。機能を増やすとその分、必要となる電力が増加します。太陽光パネルで発電できる電力量にも限界もあるので、万能型の人工衛星を作ること、現時点では難しいです。また、万能型の人工衛星を作っった時に、たった一つの太陽光パネルが故障するとすべての機能が失われてしまいます。そのため、万能型は高機能な反面、全機能が停止するリスクが高いです。また、科学技術の進歩も高いので、単機能の小型衛星を多数、短期間の寿命で運用するのが現在のトレンドです。

★質問2.これから人工衛星が増えていった時に、何か地球に及ぼす影響はございますでしょうか。

人工衛星が増えると人工衛星同士が衝突する危険性が増加しますが、軌道を変えるなど避ける運用をしているので、現実的に衝突することは、まずないでしょう。ただし、もし、衝突した場合、人工衛星の一部が地上へ落下し被害を与える危険も考えられますが、それよりも、重大なことは、私たちが日常使っているサービスが利用できなくなる可能性があることです。例えば、位置情報サービスが停止すると、交通・物流に大きな影響を与える可能性が高いでよね。気象衛星だと、天気予報にも影響を与えますよね。

★質問3.人工衛星から撮影した映像・画像に他の衛星が映り込まないのなぜでしょうか。

低高度の人工衛星が写りこむ配置にあったとしても、人工衛星の空間分解能、焦点距離、両者の相対速度、撮像時間等の関係で他の衛星が認識できる状態で写りこむことはありません。我々の目でも、遠くに焦点を合わせた状態で、顔の前をとても小さい点が超高速で移動したとしても点の形を認識できませんよね。

★質問4.人工衛星はどのように撮った写真や画像を転送するのでしょうか。

人工衛星で観測されたデータは、衛星にあるアンテナから送信されたデータは、①地上局のパラボラアンテナで直接受信する方法と②赤道上にある中継衛星を経由して受信する方法との2通りあります。埼玉県鳩山町にあるJAXA 地球観測センターへ行くと実際に動いているパラボラアンテナを観ることができます。

★質問5.授業内ではGoogle Earth Engineを通して、環境が悪くなった例を取り上げてくださりましたが、逆に環境がよくなった例はあるのでしょうか。

例えば、ブラジル政府の対応により、森林の違法伐採される面積が少なくなったことや我が国の例だと、瀬戸内海の水質が改善され、赤潮の発生頻度が低くなったなどがあります。

★質問6.何故先生はリモートセンシングという職をお選びになったのでしょうか。

小学生の頃から地図を見るのが好きな子供でした。今、思い返すと、地図を背景とした旅客機の飛行ルート図をよく見てましたね。大学生にななり、リモートセンシングという分野があることを知り、過去を表現した「地図」よりも「今」が分かる衛星画像にワクワクし、リモートセンシング分野で活躍したいと思い、職業を選びました。

★質問7.リモート・センシング技術センター 環境解析グループとは、具体的にどのようなグループなのでしょうか。

環境解析グループは、人工衛星・ドローンを利用した農林水産分野、気候変動分野および途上国支援の仕事をします。例えば、農林水産分野だと、国の農業統計の仕事として、どこにどんな農作物が植えられているのか?、耕作放棄地はどこにあるのか?、森林保全の仕事して、ある山にどんな樹種が何本木があって、それらの木の高さや幹の太さはどのくらいか?、漁業の仕事して、海面温度などから漁場はどこにあるか?などの解析し情報にしています。また、発展途上国に大して、人工衛星の解析方法や情報の扱い方などをに教えています。

★質問8.人工衛星を再利用することはできないのでしょうか。

ロケットの再利用は進められていますが、人工衛星の場合、再利用はまだないですね。人工衛星の場合、地上に降ろすことが難しいので、将来、宇宙空間で部品交換できる技術が確立すると再利用の道が開けるかもしれません。

★質問9.大気圏で燃やすことができなかったスペースデブリは、今後どのように処理することができるのでしょうか。また、制御不能になった人工衛星や宇宙ごみを回収する方法や実際に回収しようとしている事業はあるのでしょうか。

現状、大気圏で燃え尽きないスペースデブリを避ける手段はないです。ただし、我が国の民間会社が、レーザセンサを搭載した人工衛星を利用して、スペースデブリにレーザビームを照射し、軌道を変えて大気圏に降下させて燃やすとの事業をするとの計画があると報じられています。

遠藤先生、お忙しい中、ご回答ありがとうございました!