【第9期 第2回講義】
「アナウンサーのお仕事 ~時代の変化と伝え方~」
株式会社TBSテレビ
TBSアナウンサー 蓮見 孝之 先生
2022年7月2日に実施した「第2回講義」にご登壇いただいた、株式会社TBSテレビ TBSアナウンサー 蓮見 孝之 先生より、なんと、皆さんの質問に対する第2弾の回答が届きました!
お忙しい中、全ての質問に目を通していただき、追加で回答をいただいています。
蓮見先生の追加の特別講義第2弾、ぜひ読んで学んでみてください!
【株式会社TBSテレビ TBSアナウンサー 蓮見 孝之 先生がみんなの質問に「追加で!」答えます!】
★質問11.テレビに興味を持つなら、アナウンサー以外の仕事もありますが何故アナウンサーになったのですか?
「放送局で働いてみたい!」これが私の最初の志望動機です。長く続けてきたサッカーに関わるにはどんな方法があるのだろう?と自問自答する中で、それが夢への第一歩だと思いました。アナウンサー採用試験に合格していなかったら、TBSの一般職採用試験にチャレンジしていたと思います。
★質問12.普通のサラリーマンは朝会社に行って、夜家に帰ってきますが、アナウンサーは、早朝だったり、真夜中だったり、どこかに行ったり、決まった時間ではない時に仕事をしていますが、働いている時間数は、どうやってはかっているのですか?
「働き方」をイメージする上で大変重要な質問だと思います。ありがとう!
TBSでは出勤時、退勤時に自分自身の社員証を使って「エントランスゲート」を出入りします。そのため「ゲート」を通過する際に、何時に出社したか?退社したかが?記録として残るようになっています。だから、遅刻した場合には証拠が残ってしまいます(笑)加えて、ダブルチェックの観点から職員一人一人が「何時~何時」まで働いたか?具体的な業務内容や作業場所などについて所属長に申告するシステムになっています。このように丁寧な状況把握をすることで、職員一人一人の健康状態や勤務状態を把握できるようになっているんですよ。
★質問13. 自称」ではないアナウンサーはいないんですよね?
アナウンサーという職業に興味をもってくれたようでとても嬉しいです。講義の中で私がお伝えしたかったのは、アナウンサーというのは、あくまで役割を示す【呼び名】に過ぎないということです。だから、【アナウンサー】という資格があるわけではありません。ちなみに、アナウンサーと同じように「話す・伝える」役割を示す言葉として、「キャスター」や「アンカー」と読んだりもします。でも、ご挨拶するときには「(私は)アナウンサーです」とお伝えしています。「TBSの社員です」というよりも、「報道局の記者です」「情報番組のディレクターです」と名乗った方が、相手も理解しやすいですよね。
★質問14.アナウンサーになるにはどうしたらいいですか
悩ましい質問です・・・汗
正直、私自身、どうしてTBSのアナウンサー採用試験に合格できたのか、未だに分かりません。せっかくなので、TBSアナウンサーの公式HPをご覧になってみてください。約60人のアナウンサーのプロフィールを閲覧することができます。どうでしょう・・・。一人一人、顔立ちも雰囲気も、趣味や特技も来歴も千差万別です。何らかの共通点を上げるとするならば、それは「テレビ」「ラジオ」が大好きだということです。「え~!テレビが好きなだけでアナウンサーになれるはずないじゃ~ん!」と突っ込まれそうですが、その逆も然りです。高学歴で英語が堪能、海外に住んでいた、甲子園出場、箱根駅伝を走った、芸能活動の経験、等々、何か特殊な経験があればアナウンサーになれるのか?と問われれば、それは必ずしも「YES」ではありません。むしろ、普段の何気ない日常をどのように楽しんでいるか?トマトやキャベツがいくらで売られているか?外出しにくいコロナ禍でどのような学生生活を送っているのか?私はそうした点の方が重要だと思っています。大学生になった時、またお会いする機会があることを期待しています!
★質問15.外国人にインタビューをするときは、蓮見先生自身が英語で質問するのですか?
英語でインタビューする際は【通訳さん】を介します。ですから、インタビューの現場には【私】と【取材対象者】、さらに【通訳さん】の3人がいることになります。
そこで板垣さんに問題です!『通訳さんは、インタビュー中、どこに座っているでしょうか?』
正解は・・・『私の隣』です。なぜだか分かりますか?
それは、【取材対象者】のカメラ目線を一定方向に保つためです。
私と取材対象者は向かい合った状態で座っています。そして、カメラマンは私の方から取材対象者を撮影することになります。この時、通訳さんが取材対象者の隣に座ってしまうとカメラに映ってしまいますよね(笑)
通訳さんが私の隣に座っていればカメラに映ることはありませんし、取材対象者の目線も【私と通訳さん】の方を向くことになります。理解できましたか?
ちなみに!「外国人=英語が話せる」とは限りません。アメリカやイギリスなど英語圏の国々の人は英語を話せる場合が多いですが、国によっては別の公用語を使っていますし、様々な理由で英語の学習をしていない人たちもいるのです。これは「各国の教育状況」にも関係する話題なので、頭の片隅に置いておいてもらえると嬉しいです。
★質問16.アナウンサーになって楽しいと思うことは何ですか?
会えない人に会える!行けない場所に行ける!非現実的なことが現実になる!それに尽きるとおもいます(笑)
また、私はアナウンサーとして番組に出演すること以外にも、複数の放送外業務を担当させてもらっています。それは、主に「教育分野」に関係する取り組みです。私は元々、教員志望でした。また、TBSで唯一、保育士の資格を持っているアナウンサーで、1人のスタッフとして社内外の様々な取り組みに関わっています。テレビに出ることだけが全てではない、というのが私の価値観です。とっても有意義な時間を過ごすことができていますよ!
★質問17.アナウンサーをやっていてよかったなと思ったことはありますか?
沢山ありますよ!実は私・・・社会科の教科書に載っているんです!!(ちょっと大げさに言っちゃったかな・・・汗)
小学校5年生の社会科では様々な産業について学習する単元があります。その中の一つが「情報通信産業」です。
この単元では、皆さんが見ているテレビのニュースがどのように出来上がっているのか?取材、撮影、編集、放送、様々な現場の様子が写真とともに紹介されています。
そこで使われている写真の一つが、私(蓮見アナ)がスタジオでニュースを読んでいる写真です。
そして・・・その教科書を、何と!我が家の長男が目にする日が来たのです・・・(笑)
昨年、我が家の長男が小5のときに、まさにその教科書を使って勉強することになったのです。また、担任の先生に声をかけていただき、長男の教室で社会科の授業をさせていただきました。実の父親が先生役として教壇に立つことを、長男がどのように感じてくれていたかはわかりません。でも、私にとっては、まさに夢のような幸せな時間になりました。
※全ての学校で使用されているわけではありませんが、現在、小学校5年生で東京書籍を使っている人がいたら、ぜひ!見てみてくださいね。
★質問18.放送局でアナウンサーがいなくなったらどうなるのですか?
恐らく番組制作上、困ることはないでしょう。でも、それで良いのです。
アナウンサーは「話す・伝える」プロですが、ディレクターや記者、カメラマンも、実は話す訓練をしています。
ニュースを読む、報道現場におけるリポート、中継は、もしかすると、普段、バラエティ番組やスポーツを担当しているアナウンサーよりも、記者やディレクターが喋った方が上手に伝えられるかもしれません。
特に東日本大震災や熊本地震のような大災害が突然起こってしまっとき、私たち報道機関はいち早く、その情報を伝えなければなりません。そんな時に「アナウンサーがいないぞ!」「アナウンサーがいないと番組が放送できない!」などという状態では報道機関としての役割を果たせません。得手不得手、上手い下手はあるかもしれませんが、TBSに勤務している全ての職員が「伝える力」を訓練していく必要があると思っています。
★質問19.茨城県出身のアナウンサーが少ないと聞きますが、TBSのアナウンサーの中には、(いる場合)何人いますか?
さぁ、どうでしょう(笑)今回の中で最も難しい質問ですね・・・。
TBSアナウンサーの公式HPをご覧になってみてください。プロフィール紹介の欄には出身大学と出身高校が明記されているのでご覧になってみてください。
★質問20.アナウンサーという仕事上身に着けておいたほうが良いものとは?
「聞く力」と「ポイントを整理する力」だと思います。この二つの力は、上手に話せる人の特徴でもあります。私も、この二つの力が備わるように引き続き頑張っていきたいと思っています!
★質問21.報道で、遺族なったばかりの人にマイクを向ける姿をよく見かけますが、何のためにやりますか?
言うまでもなく、ニュースを多角的に報道するためです。これについては、様々なご意見があるでしょう。ご遺族に限らず、被害者家族、同僚、ご友人、お知り合いの方々への取材活動、さらには加害者側の関係者への取材活動についてもです。正しいか正しくないかの議論を始めると「解」は見つかりません。それは物事の価値観や求める情報は、人により千差万別だからです。少なからず私たちは、公的機関、例えば国や警察、消防などから発表されている情報をそのまま鵜呑みにして届けるのではなく、様々な視点でニュースや出来事を届ける役割を担う必要があると考えています。というのが、報道機関に務める人間としての気持ちです。一方で、1人の人としての気持ちもあります。もしも、私にとって大切な存在である家族や友人が何らかの事件や災害に巻き込まれた時に私自身がマイクを向けられたとしたら、果たして私はそうした取材に応じることができるかどうか・・・。想像するだけでも心が傷みます。
繰り返しになりますが、こうした取材活動が「正しいか正しくないか」「良い悪い」については、個々によって「解」は異なるでしょう。ただし、私も様々な取材活動を通して多くの方にマイクを向けてきましたが、「自分の言葉で伝えたい、訴えたい、届けたい」と思っていらっしゃる方々がいることも、忘れてはいけない大切なことだと思っています。
★質問22.アナウンスの仕事で、初めてしてしまった失敗はありますか?
ネット&ローカルの切り替え時刻までにニュースを読み収めることができなかったことです。これは見習いのころ何度かやってしまった失敗です。「ネット&ローカルの切り替え」と言われても、TBSが放送されている主に関東圏にお住まいの人には良く分かりませんよね。ニュースには、全国のニュースを扱う「ネット」と各地のニュースをお伝えする「ローカル」という二つの時間帯が存在します。例えば15分間のニュースがあったとして、そのうち前半10分は「ネット」、後半5分は「ローカル」という設定です。ローカル枠は、北海道内のニュースなら北海道放送の局アナが読み、近畿地方の場合は大阪・毎日放送の局アナが読み、関東地方の場合は私たち東京のTBSの局アナが読むことになります。ですから、関東地方以外にお住いのみなさんでしたら、私が時間内に読み収めることができない場合、ニュースを読んでいる途中でも、決まった時間になるとすぐさま現地の局アナの顔に切り替わり「ローカル」ニュースの放送が始まってしまいます。ここがプロのアナウンサーの腕の見せ所で、各放送局のアナウンサーが一呼吸おいてから読み始められるように、切り替え時刻の1秒半くらい前に読み収められるように読むと気持ちよくバトンを繋ぐことができます。
★質問23.アナウンサーが、イベントの司会の仕事をするのは、なぜですか?
私たちが司会を担当するイベントは、主にTBSに関連のあるイベントが殆どです。例えば、TBSが主催するイベントのほか、TBSが手がけている映画や舞台の試写会、さらにはTBSの株主総会の司会など、イベントの種類は多岐に渡ります。局アナはTBSの広報的役割も担っていますから、外部の司会者ではなく、自局のアナウンサーがその役割を務めることになります。また例外的に、社外の企業や関係会社からTBSのアナウンサーを司会者として派遣してほしいというご依頼が届く場合もあります。その場合には、私たちが所属するアナウンスセンターや各部署と協議した上でお引き受けするケースもあります。私は先日、厚生労働省や東京都の「子育て支援」に関連するイベントからご指名があり司会を務めさせていただきましたよ。
★質問24.なぜアナウンサーは、資格がいらないのでしょうか。
さぁ、どうしてなのでしょうねぇ。アナウンサーという職業は、ある意味では「専門職」と見られていますから、特別な資格を有する人たちの集団と言っても過言ではないでしょう。ただし、実際に18年間アナウンサーとして働いている私から言えることは、アナウンサーは決して、「特別な存在」でも、「特別な職業」でもないということです。むしろ、自虐的な表現になってしまいますが、アナウンサー出身の先輩方の中には「出来ることを増やしておいたほうが良い」「将来のために勉強しておいたほうが良い」と助言されたことがあります。私の言いたいことは、何となく伝わっていますか?(笑)
ですから、アナウンサーの中には大学院や社会人向けスクールなどに通っている同僚もいますし、資格取得に向けて勉強を続けている同僚もいます。私たちアナウンサーは「話す・伝える」プロではありますが、当然のことながら、世の中のありとあらゆる仕事において「話す・伝える」場面は多々あります。「テレビに映る仕事」という側面だけ切り取れば、他の会社員とは違いますが、それ以外の点においては他のお仕事をされている方々と変わりません。一方で、少し前向きなお話をすると、私たちアナウンサーは「特別」であってはいけないと思っています。綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、私たちは視聴者代表でもあるのです。世の中の生活者目線に立って物事を見ることが重要です。その視点に立てるかどうかで、発する言葉も変わってくるでしょう・・・。
★質問25.ニュースで、速報とか、急にくるニュースとかは、切り替えることは、難しいんですか?/ 速報が来たときは、どうしているのですか?
とても難しいことであるのと同時に、その切り替えこそ、プロの伝え手として試されているのだと思います。また、事前に予期できる速報と、全く予期できない速報とがあります。予期できる速報というのは、大雨などの天候に関するニュースや事件や事故の裁判等のニュースです。これらの速報対応は事前の打合せの場で「要警戒事項」としてキャスターやスタッフと共有することができます。ただし、予期できないのは、地震や津波、火山噴火などの自然災害です。科学は日々進歩していますが、地震については未だに予知することはできません。仮に地震が起きたことを速報対応できたとしても、被災地の被害状況やその他の関連情報も、しばらく時間が経過しなければ全容を把握することは困難です。その際、どこまで当該地域の方々へ警戒を促すべきか・・・これは非常に難しい判断を迫られます。強いトーンで声を発すれば慌ててしまう人もいるでしょうし、落ち着いた声で発すれば、逆に安心させてしまい避難行動を控える人もいるでしょう。何よりも人命が最優先ですが、どのように伝えるべきか、非常時は原稿が無い状態ですからキャスターやアナウンサー自身の訴求力が問われてきます。
★質問26.アナウンサーは何歳から何歳まで入ることができますか?
放送局勤務の「局アナ」については「新卒採用」が一般的です。「新卒採用」というのは、4年制大学を卒業する見込みの学生、大学院を卒業する見込みの学生を指します。一方、「子ども大学水戸」の講義でもお話ししましたが、アナウンサーは資格を必要としない職業ですから「私はアナウンサーです」と名乗ってしまえば、その時点から、フリーランスのアナウンサーとして仕事を始めることができます。
★質問27.アナウンサーはご飯を食べる時間がどうなっているのか知りたいです。朝ご飯は朝の番組に出る時は何時に食べますか?
この点は、現在、小中学生として学校生活を送っている皆さんとは大きく異なる点ですよね。ひと言で答えるなら・・・「食べられるときに食べる(笑)」です。私が5時半~8時半の早朝のテレビ番組に出演していた頃は、本番終了後の9時頃から朝ご飯を食べていました。食べるタイミングが難しいのは、早朝番組よりも8時~10時頃にかけて放送されている午前中の番組だと思います(汗)現在、TBSテレビでは「ラヴィット!」が放送されている時間帯ですね。みなさんなら、放送前と放送後、どのタイミングで朝食をとりますか?8時~生放送となると、恐らく6時頃から打合せやリハーサルが始まります。rとなると・・・ご飯を食べるのは5時台でしょうか?一方、10時の放送終了後となると、食べ始めるのは10時半頃~ですよね?このタイミングだと、もはや朝ご飯なのか?少し早めの昼食なのか?とっても微妙な時間でしょ?ですから「食べられるときに食べる!」健康管理には十分気を付ける必要があります(汗)
★質問28.現場で急にコメントを言わないといけないときはどうやってしゃべるのですか。いろんな人に見られるのって、楽しいですか?
臨機応変に対応するしかありませんね(笑)
それから、色々な人に見られることについてですが、これはどんな状況に身を置いているかで、その気持ちは大きく変わります。TBSが主催するイベントやバラエティ番組の収録現場などでは、大勢の人に見てもらえることはとっても嬉しいです。私自身がどう見られているか・・・ではなく、少なくともTBSの番組に興味を持ってくださっていることを誇らしく感じます。一方、私が長く携わってきたのが報道ニュースの取材現場です。ニュースの現場にも多くの人が押し寄せます。例えその現場が悲しいニュースの現場でも人は集まってしまうのです。これは仕方のないことなのですが、カメラの前を意図的に横切ろうとしたり、ピースをしたり、声を上げながら笑っていたり、報道関係者を揶揄する声も多く飛び交います。もちろん、そうした現場で取材活動をすること自体にご批判の声があることも承知していますが、そうした現場に立っているときはとても複雑な心境です。
★質問29.アナウンサーの仕事で一番必要な才能は何ですか。
必要な才能はありません。いや・・・必要な才能を持ち合わせていない人でもできる仕事だと信じています。どんな仕事にも共通することですが、いわゆる成功を手にするには「3つ」の要素が不可欠だと思います。それは、①才能②運③努力です。①才能と②運については、私たちがどんなにもがいても手に入れることはできません。唯一出来ることがあるとすれば「神頼み」くらいでしょう。けれども、③努力はどんな人でも始められます。「やればできる!」というキャッチフレーズは皆さんも知っていると思いますが、私は「やれば伸びる!」と思っています。なれるかどうかは分からない、でも、「やれば伸びる!」
もちろん、入試と同じように傾向と対策は必要ですが、努力することで、自分がなりたい何者かに近づけるはずです!応援しています!
★質問30.アナウンサーがニュースを伝える時に自分の意見を言うときと言わないときの違いは何ですか?
もしアナウンサー個人の判断で私見を述べることがあるとすれば、それは他の出演者が差別的な発言をしたり、あきらかに道理に反する発言をしたときに、それを丁寧に言い直したり、反対意見として番組の姿勢を示す場合です。少し誤解があるかもしれませんが、アナウンサー自身が自らの考えを述べることはほとんどありません。放送上のトラブルやミスを軽減するために、基本的にはどの番組も本番前に打合せをし、番組としてどのようなメッセージを発信していくべきか、キャスターも交えて慎重に検討するものです。もちろん、原稿をアレンジする人もいれば、魅力ある表現方法で情報発信できる人も中にはいます。しかし、それはごく一部のアナウンサーです。ただ・・・ラジオは、少し違うかな(笑)
★質問31.本日のお話の他にアナウンサーで難しいことはありますか?
アナウンサーとは言え、普段担当していない仕事を引き受ける時は物凄く緊張します(汗)例えば私の場合、普段は報道・情報系の番組を担当していますから、バラエティの仕事やスポーツの仕事を振られたら・・・恐らく、ガチガチになるでしょうね。
★質問32.蓮見さんは自分の言ったことが視聴者に対して間違ったメッセージを与えてしまったことはありましたか
正直、放送するたびに起こることだと思っています。私の準備に不足があったり、伝え方が下手だったり、色々な要因が考え
られます。ただし、視聴者やリスナーがどのように受け取ったかについては知り得る機会は殆どありません。そこで大切な手段
となっているのが、TBS視聴者センターに寄せられる様々なご意見です。ここには実に多くの声が届きます。全てに目を通すこ
とはできませんが、自分に関することだけでなく、様々なご意見に触れることで認識を改めることもできます。
★質問33.アナウンサーになってどうですか?
とても充実しています。実は私は元々教員志望でした。ただ、幸運なことにTBSの採用試験に合格し、教育実習も済ませ、当時はどちらの道を選択するべきか悩みました。ただ、局アナになるには一般的に新卒採用が基本です。つまり、教員から局アナに転職することはできません。逆に、教職の道は社会人経験を積んだ後でもチャレンジすることができる!むしろ、教員こそ社会人経験が必要なのではないか?と思ったのです。そこで当時の私はまずは局アナとして頑張ってみようと決心しました。結果的に私はアナウンサーとして働き続けていますが、ここ10年ほどの間、地元の小中学校を回って「将来の夢や職業」をテーマにした講演活動も続けています。局アナを続けながら、大好きな学校にも足を運べる。私にとってはとても幸せです。
★質問34.蓮見先生は、スポーツ実況と報道のリポートでは、気持ちと話し方はどう変わりますか?
「伝える」という意味ではジャンルは違えど同じだと思っています。ただし、スポーツの実況アナは「唯一無二」の存在です。例えば、報道リポートを担当するアナウンサーは何人もいます。同じ現場に同じ局から複数のアナウンサーが入ることもあるので、番組の意図やVTRの構成によって話す内容も変わってきます。けれども、スポーツの場合、一つの試合を実況するアナウンサーは“たった一人”です。複数のアナウンサーが同時に同じ試合を担当することはありません。その意味では、ある種の責任感の質が大きく異なると言えるでしょう。
★質問35.スポーツ実況とリポーターだったらどっちが好きですか?
なぜ、自分のことをさん付けで話しているのですか?
両方好きですよ!でも、10年以上スポーツ実況の仕事をしていないので、できればやりたくないですね(笑)
自分のことを“さん付け”で話してしまうのは、私の癖です。どうしてそうなってしまったのかは不明なのですが、時々、指摘されることがあります(汗)
★質問36.数あるメディアの中から、なぜTBSに勤めようと思ったのですか?
先生はなぜ色々な放送局がある中でTBSに入ったのですか?
TBSは他の放送局と違い「テレビとラジオ」両方がある会社だからです!・・・と、いつも答えています。
けれども、実際にはどの放送局でも良かった、というのが本音です(笑)局アナの採用倍率は“1000倍”とも言われています。2000人くらいの応募の中から、実際に採用内定を勝ち取れるのは2、3人です。ですから、TBSの採用試験が残念な結果だった時には、もちろん他のテレビ局も受験していましたよ!恐らく、他のアナウンサーの皆さんも同じではないかと思います。
★質問37.緊張した時は、どうしていますか?
緊張の“種類”にもよるかもしれませんね。
まず緊張の原因、第一位は「準備不足」です。これは次回から「もっと準備しよう!」と心がける必要があります。自信をもって話
せるように、出来るだけ調べたり、話すトレーニングをしたり、無理に暗記したり覚えようとせず、台本や進行資料を見ながらゆっ
くり話す。このように対処するよう心がけています。
★質問38.先生がアナウンサーになるときに,苦労したことは何ですか。
どの仕事にもいえるかもしれませんが、“これをやれば合格する!”という必勝法がないことです。
これは進学受験とは大きく異なります。中学や高校の受験の場合は、過去問を解いたり、必要な知識、解き方を覚えて、何度も反復したりしますよね。そうした努力の積み重ねによって、他の人より高い点数を取る!というのが必勝法です。でも就職活動における受験は、ただ勉強ができるだけでは合格できません。会社側からすれば「一緒に働きたい」「頑張り屋さんだな」「諦めない人だな」など、一人一人の性格や人となりも重要な要素です。ですから小さいころから、色々な人と積極的にコミュニケーションをとりながら“生きていく力”を培っていくことが大切だと思います。
★質問39.結婚をしても仕事を優先する人もいる中で、蓮見先生が家族との時間を一番大事にしようと思ったきっかけはなにかありますか。
難しい質問ですね(笑)ただただシンプルに家族といる時間が一番大切だと思うからです。頭の中で優先順位をつけているわけではなく、本能的に・・・。仕事は仕事。家族は家族。比べられません。あえて言うなら、仕事は生きていくための“方法”や“手段”であるという考え方。家族と末永く暮らしていくためには、仕事は大切。その仕事を長く続けていくためには、仕事も一生懸命に取り組む必要がある。そして私は現在41歳です。会社員生活は残り20年ですが、家族とはその後も一緒ですからね。一緒にいたい人との時間を大切にするのは、私にとってごくごく自然なことです。
★質問40.アナウンサーの仕事を続けてきて、一番楽しかったことはどんな時ですか。
私は以前、海外の連続ドラマの取材で、アメリカやカナダの撮影現場に足を運んだことがあります。そこで目にしたのは複数のトレーラーでした。まず、日本の現場では見たことのない光景だったので驚いたのですが、実はこのトレーラー、何と!メインキャストたちの楽屋(がくや)だったのです!ちなみに楽屋というのは、セリフを覚えたり、着替えたり、休憩したりする控室のこと。日本では会議室やホテルの部屋を使用するのが一般的です。しかし海外では、いわゆる大型のキャンピングカーを一回りも二回りも大きくしたようなトレーラーを運び入れ、そこで生活しながら撮影を継続するのだとか・・・。またケータリングの規模にもビックリです。これは、いわゆる食事のこと。海外では、キャストだけでなく、あらゆるスタッフも利用できる巨大なケータリングがありました。日本だと一人一人にお弁当が配られて、それぞれの場所で静かに食べている印象です。国や地域によってそのスタイルもきっと色々な違いがあるのでしょうね。とにかくスケールが日本とは違います。
ちなみに、日本の取材クルーとして参加していた私が、何と!エキストラでドラマの撮影に参加したこともありました。もちろん、米粒くらいにしか映っていませんが・・・(笑)
それでも、なかなか無い経験ですからね!今でもよく覚えています。
★質問41.葬儀用のネクタイいがいにかばんのなかにいれているものはなんですか。
事件や事故、災害の取材を担当していた頃は、予定外の出張や宿泊に備えて「一泊分」の着替えは常備していました。またパスポートも持ち歩いていました。ごくごく稀なことですが、急遽、外国に向かった経験もあります。あとは国会に出入りする記者証です。このような仕事は通常、報道記者と呼ばれる人たちが担う役割ですが、当時の私は、アナウンサー兼報道局の職員として全国を飛び回っていました。
★質問42.なぜ、テレビ番組に応募しようと思ったんですか?
私は当時、お笑いコンビのウッチャンナンチャンのことが大好きで、二人の番組を欠かさず見ていたファンの一人でした。そんな時、二人が司会を務める番組で、とある企画の出演者募集の告知があったのです。これは二人に会えるチャンスかもしれない・・・そう思った私は、ダメもとで応募ハガキを送ってみることにしたのです。すると、どういう訳か、数日後にテレビ局に呼ばれ、何度か面接をし、最終的に大型企画の主演を務めることになったのです。まさかまさかの出来事でした。そのおかげで、ウッチャンナンチャンの一人、南原清隆さんに直接お会いすることができたので、当初の願いは叶ったわけですが・・・。結果的に私自身がテレビ企画の出演者になったことで、今まで遠い世界だと思っていたテレビ業界が、少し身近に感じられるようになったのです。人生、どこでどんなチャンスが巡ってくるのか・・・本当に分からないものです(笑)
★質問43.仕事が多い時期ってありますか
“この期間は特に忙しい”という繁忙期はありませんが、いわゆる一般的な働き方とは異なる点が多いのが放送局の仕事です。テレビ局は24時間365日、動き続けています。土曜だろうと日曜だろうと祝日だろうと関係ありません。また、いわゆる“お盆休み”もありませんし、年末年始のお正月休みもありません。我が家の子どもたちが学校の無い日も、私だけ仕事に出かけることも多々あります。でも、安心してくださいね。テレビ局に休みはありませんが、そこで働いている私たち職員にはお休みがありますから。
★質問44.アナウンサーを、やめたいと思ったことは、ありましたか?
もちろん!何度もありますよ(笑)
★質問45.アナウンサー 学校の先生以外になってみたい職業は何ですか?
ウェディングプランナーです!私が結婚式を挙げた時にも大変お世話になりました。今はコロナ禍の影響で業界全体が大変な時期だと思いますが、そんな時でも、新しい人生を歩み始める多くのカップル、ご夫婦に寄り添いながら丁寧な対応をされているはずです。職業柄、披露宴の司会を引き受けることはありましたが、新郎新婦を陰で支えるウェディングプランナーのお仕事にも魅力を感じています!
★質問46.楽しいことや良かったことを話すとき、もし自分の本当の気持ちは楽しくない時にはどんなふうに話していますか。
どのように表現すれば“ポジティブ”かつ“自分の気持ちに反しない”伝え方になるかを考えます。一人で考えるのではなく、同行しているスタッフの意見も聞きながら。代表的な例でいえば、いわゆる「グルメリポート」ですね。ちなみに私はトマトが苦手です。トマトを食べても、心の底から“美味しい!”とは言えないかもしれません(汗)。そんな時は、“味”の表現ではなく、例えば「状態」について“みずみずしいですね!”と表現したり、「大きさ」について“とっても大きいですね!”と表現したり、他にも表現方法はいくつかあるはずです。逆に、トマトが苦手な私でも美味しく感じた時には、心の底から“美味しい!食べやすい!もう一つ食べてもいいですか?”と、表現することができるはずです。
★質問47.発表している時に間違えた時は、どのように対処すればいいですか?
間違え方や間違えた内容にもよりますが、いったん立ち止まって、言い直す。これが一番です。また、明らかに差別的な表現であったり、誰かを傷つける表現であった場合には、丁寧にお詫びし、反省の意を示します。
★質問48.のどをいためてしまったことはありませんか? しゃべるお仕事なので、風邪を引かないようにとか、気をつけないといけないことがあると思うのですが、特に気をつけていることはありますか?
手洗い、うがい、喉を乾燥させない、皆さんが日頃から気をつけていることと同じですよ。ただし、大事なことは本当に声が出なくなってしまった時の対応です。もし、声が出なくなってしまったら、大原さんだったらどうしますか?喉の不調が分かっている状態でもがんばって仕事をやりきりますか?
私なら、しっかり反省した上で、仕事を代わってもらえる仲間がいないか上司に相談します。一番に考えなければいけないのは、テレビを見てくれている視聴者の方々です。聞きづらい声では、大事な情報が伝わりません。頑張って本番に臨んでも、それでは本末転倒です。私たちも人間ですから、常に万全な状態であるとは限りません。無理をせずに早く治すのも仕事なのです。
★質問49.先生のアナウンサーとしての仕事の中で声はとても使うと思いますが日頃どのようなケアをしていますか
喉のケアは大切ですが、最近では骨格や表情を作る筋肉の衰えに悩んでいます。特に口を動かす筋肉です。人間は年齢を重ねるごとに体の色々な部位が衰えてきます。これは仕方のないことなのですが、喋ることを生業としている以上、改善できるところは何でも意識しなければなりません。口の開きは、良い発声をするためには重要です。
★質問50.活舌が悪い人でも、アナウンサーになれますか。
活舌を良くしようと努力すれば・・・アナウンサーになれる可能性は高くなるはずです。ただし、活舌が良いだけでは残念ながらアナウンサーにはなれません。放送局の採用試験で毎年アナウンサーとして入社できるのは2,3人。東京には5つの民間放送局がありますから、合わせて10人前後が入社する計算です。となると・・・他にも色々な鍛錬が必要です。
★質問51.僕は放送委員会をしています。運動会での上手な実況の仕方をおしえてください。
実況を“聞く側”だとしたら、どんな実況が聞きたいですか?そこに理想とする実況の「ヒント」が隠れているような気がします。加えて、「言葉を紡ぐ」という観点でアドバイスするならば、できるだけシンプルに、短いセンテンスで言葉を発していくと聞きやすい実況になるはずです。短く!端的に!シンプルに!これがポイントです。
★質問52.滑舌をよくするにはどうすればよいですか。
滑舌のポイントは「口の動き」と「舌の動き」です。それらを鍛えてくれる教科書のようなものをご紹介しましょう。それは「外郎売り」です。元々は市川團十郎の歌舞伎十八番の一つなのですが、現在は、私たちアナウンサーや役者、声優などの養成課程で発声練習や滑舌の練習教材として使われています。インターネットで「外郎売り」で検索すると、その全文や動画が沢山見つかるはずです。一度チャレンジしてみては?
蓮見先生、お忙しい中、一つひとつ丁寧にお答えいただきまして、本当にありがとうございました!